国内には、「街づくりを優先的に進める」と定められているエリアがあります。
そのエリアのなかでも、人が暮らすエリア、商業を発展させるエリアなど「どのような街にするか」が決められており、それぞれにルールが設けられていることをご存じでしょうか。
今回ご紹介する「高層住居誘導地区」も、ルールが設けられているエリアのひとつです。
この記事では、高層住居誘導地区が制定された経緯や導入された土地の例を解説するので、ぜひご参考になさってください。
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都市部の土地を売買する前に知りたい「高層住居誘導地区」とは?
高層住居誘導地区とは、職住隣接(職場と住居が近いこと)を目指し、都市部に人が住むエリアを確保することを目的とした用途地域のことです。
都市計画法第9条16項に基づいています。
高層住居誘導地区は、ただ単に大都市の繁華街に人が住むエリアを増やそうとするものではありません。
住居とほかの建物などを適正に配分し、利便性の高い高層マンションなどを建てて住居を一定のエリアにまとめる役割も果たしています。
高層住居誘導地区に指定されるエリアとは
最後の章でご紹介しますが、高層住居誘導地区に指定されているエリアは、2024年9月現在「芝浦アイランド」と「東雲キャナルコート」の2か所です。
このことからもわかるとおり、大都市であればどこでも高層住居誘導地区に指定されるわけではありません。
高層住居誘導地区に指定されるためには、まず次の条件を満たしている必要があります。
●第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域・近隣商業地域・準工業地域のいずれかの用途地域であること
●あらかじめ指定された容積率が400%または500%の地域であること
上記のいずれの条件も満たしたエリアが高層住居誘導地区に指定されると、次のようなルール(制限)を加えられます。
●敷地面積の最低限度
●容積率の最高限度
●建ぺい率の最高限度
敷地面積とは、建物を建てる土地の面積のことです。
最低限度を定めると、高層住居誘導地区の趣旨とはあわない建物の建築を妨げます。
容積率とは、敷地面積における建物の延べ面積のことです。
2階建て以上の場合、各フロアの面積を合計して算出します。
建ぺい率とは、敷地面積における建物の面積のことです。
「土地を上から見たときに建物がどのくらいの面積を占めているか」を考えるとわかりやすいでしょう。
これらの制限を加えることにより、小さな建築物は建てにくくなり、高層マンションは規模を大きくしやすくなります。
なお、高層住居誘導地域としての制限と、第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域・近隣商業地域・準工業地域のいずれかとしての制限が異なる場合は、高層住居誘導地域としての制限が優先されます。
また住宅部分の面積が3分の2以上の高層マンションなどを建てるときには、住宅の割合に応じて容積率、道路斜線制限、隣地斜線制限、日影規制などが緩和されたり、一部除外されたりすることが特徴です。
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高層住居誘導地区が定められた経緯とは
高層住居誘導地区が定められたのは、1997(平成9)年のことです。
現在でこそ都心部には豪奢なタワーマンションが建ち並び、東京都の人口一極集中が問題となっていますが、かつてはそうではありませんでした。
昭和50年代、日本はバブル経済に沸いていました。
好景気であった反面、東京都心の地価はどんどん高くなり、一般市民はマイホームを所有して生活を営むことが難しくなりました。
また広くゆったりとした環境で、緑に囲まれて子育てをしたいと考える方も少なくありませんでした。
そこで東京都は住む場所としての魅力を失い、郊外のベッドタウンに人口が流出する「ドーナツ化現象」が生じてしまったのです。
ドーナツ化現象とは
ドーナツ化現象は、都心部の人口がぽっかりと少なく、都心部を取り囲むように郊外の人口が多くなっている様子を、食べ物のドーナツの形になぞらえたものです。
ドーナツ化現象が生じると、都心部では夜間の治安が悪くなります。
夜間に都心部で生活する方が少なく、人目が届かなくなるためです。
郊外では増加する子どもの数に教育機関が耐え切れず、待機児童が増えたり、学校の統廃合が頻繁におこなわれたりするようになりました。
子育てのために転居してきたにもかかわらず、これでは子どもにとって良い環境とはいえません。
郊外への移住者はファミリーが多かったため、子どもだけでなく高齢者の受け入れも難航していました。
ドーナツ化現象はバブル経済と深い関わりがありますが、実際はバブル経済崩壊後の1996(平成8)年ころまで、東京都の人口減は続いています。
そこで実施されたのが、都心部に高層マンションを建てやすくする「高層住居誘導地区」の制定でした。
通勤しやすい快適な居住環境を都心部に整備し、郊外に移住した方々を呼び戻すことを目的としています。
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高層住居誘導地区が導入されている土地の例
このような経緯で制定された高層住居誘導地区ですが、実際は東京都内に2例しか存在していません(2024年9月時点)。
東京都港区にある「芝浦アイランド」と、東京都江東区にある「東雲キャナルコート」です。
近年問題となっている東京都の人口一極集中は今後も続くと考えられるため、高層住居誘導地区を導入する土地が増えることはほとんどないでしょう。
芝浦アイランド
高層住居誘導地区の制定を受け、1999(平成11)年に開発されたのが東京都港区芝浦四丁目にある「芝浦アイランド」です。
容積率は600%、日影制限は一部除外されています。
四方を運河に囲まれた島状のエリアであり、もともとは工場や操車場、バス車庫、都下水道局ポンプ場、都営アパートなどが建ち並ぶ東京湾岸の埋立地でした。
このエリアを都市再生機構や民間事業者が共同で再開発し、誕生したのが芝浦アイランドです。
このような経緯があり、現在でもエリア内にバス車庫や都下水道局ポンプ場、都営アパートが残っています。
芝浦アイランドの人口は約1万人、総戸数は約4,000戸です。
4つの街区から構成され、2街区には賃貸の超高層マンション、ほかの2街区には分譲の超高層マンションが建っています。
マンションは48~49階建てで、それぞれ1,000戸前後です。
マンションの周囲には、エリアを一周できる遊歩道、クリニックモール、高齢者施設、異年齢交流施設、リゾートダイニング、スーパーマーケットなどの施設が整っています。
最寄り駅はJR「田町駅」で、徒歩10分~15分程度です。
東雲キャナルコート
東京都江東区東雲一丁目にある東雲キャナルコートは、2001(平成13)年に開発がスタートしました。
敷地面積は約40,000㎡と広大で、6つの街区から構成されています。
中央にS字のメインストリートがあり、商業施設、クリニック、学習塾、子育て支援施設などが並んでいることが特徴です。
イオンモールとも隣接し、東雲キャナルコート内で生活が完結する「ひとつの街」のようなエリアとなっています。
6つの街区ごとに異なる建築家・デザイナーが携わっている東雲キャナルコートの住宅は、デザイン性の高いものばかりです。
街区ごとに設定されたテーマに則りながら、暮らしやすさ美しさを両立した街づくりがおこなわれています。
本来は建ぺい率60%、容積率400%の第二種住居地域ですが、高層住居誘導地区として容積率が600%に緩和されています。
最寄り駅は東京メトロ有楽町線「辰巳駅」「豊洲駅」、りんかい線「東雲駅」です。
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まとめ
高層住居誘導地区は、ドーナツ化現象による東京都の人口減を抑止するために、1997(平成9)年に制定された用途地域です。
容積率などのルールが緩和され、高層マンションを建てやすいエリアとなっています。
導入例は東京都内にある「芝浦アイランド」と「東雲キャナルコート」の2例しかありません。
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株式会社リードホーム スタッフブログ編集部
都心・城南エリアで土地・一戸建て・マンションをお探しの方のために結束したファミリータイプ住宅売買の専門集団です。目黒区・港区・渋谷区・世田谷区・品川区・大田区の居住用物件のみに特化しております。ブログでは不動産売却などの記事をご提供します。