日本列島周辺には4つのプレートの境目があり、地震発生リスクの高いエリアであると言えます。
「阪神淡路大震災」や「東日本大震災」など、国内では過去にも度重なる大きな地震が発生してきました。
「南海トラフ地震」など今後も周期的に起こる大地震も予想されているため、全国どこに住んでいても地震対策は欠かすことができません。
「地震に強い家」を選ぶためには、まず建物の構造を理解することが大切です。
建物の地震対策には、「耐震構造」「制震構造」「免震構造」の3つの工法があります。
それぞれの違いや費用について解説します。
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弊社へのお問い合わせはこちら「耐震構造」「制震構造」「免震構造」の違いとは?
建物を地震から守る3つの構造について、それぞれの違いとメリット・デメリットについて解説します。
「耐震構造」とは「揺れに耐える構造」のこと
建築基準法では耐震基準が定められており、建物を新築する際にはこの基準をクリアする必要があります。
建築基準法は、1978年に発生した宮城県沖地震を受けて、1981年に耐震基準の大幅な改正が行なわれました。
改正前に建築確認を受けた建物は「旧耐震基準」と呼ばれ、耐震性能が不足している可能性があるため、耐震診断と適切な耐震補強工事を施すよう求められています。
その後、1995年の阪神大震災を受けて、2000年には「住宅の品質確保の推進等に関する法律(品確法)」が施行されました。
この法律内の「住宅性能表示制度」には、地震に対する構造躯体の損傷のしにくさを表示した「耐震等級」が定められています。
「耐震等級」は1から3まであり、等級の高い建物は地震保険などの割引制度があります。
●「耐震等級1」は「震度6強の地震で倒壊しない」という基準のもの。
●「耐震等級2」は耐震等級1の「1.25倍」の地震に耐えられるという基準のもの。
●「耐震等級3」は耐震等級1の「1.5倍」の地震に耐えられるという基準のもの。
防災拠点となる消防署や警察署、避難所となる建物などは、「耐震等級3」で建てられています。
2016年に発生した熊本地震では、余震と本震で震度7の地震が2回続けて起きるという過去に例のない地震災害が発生しました。
調査の結果、木造住宅では「旧耐震基準」の住宅の被害率が顕著に大きかったことがわかりました。
また、1981年~2000年の新耐震基準導入以降の建物と、接合部等の基準が明確化された2000年以降の住宅では、後者の住宅の被害率が小さくなっています。
さらに、木造住宅のうち耐震等級3のものは倒壊件数は0。
ほとんどが無被害で、被害のあった住宅も軽微または小破の被害でした。
地震の被害をより軽微なものにするためには、熊本地震の被害状況を踏まえ、新築住宅は耐震等級3とすること、既存の住宅には耐震補強工事を施すことが有効と言えます。
具体的には、耐力壁を増やしたり、鉄骨や柱の接合部を固定することで地震の揺れによる建物の変形や倒壊を防ぎます。
既存の建物の耐震補強工事では、屋根の素材を軽量化したり、耐震壁や筋交いの追加工事、柱や梁などの接合部の補強工事などが行われます。
地震の揺れ自体は建物内部に伝わるため、高層ビルなどでは上の階ほど揺れが増幅したり、家具・家電の転倒やガラス類の飛散などのリスクは高まると言ったデメリットがあります。
「制震構造」とは「揺れを吸収する構造」のこと
建物の構造の一部に「ダンパー」と呼ばれる制震装置を設置し、地震の揺れによって発生する建物の変形を吸収・軽減します。
新築だけでなく、既存の住宅に制震ダンパーを追加することも可能です。
上層階ほど揺れ幅が大きい高層ビルなどで、有効な技術です。
制震装置が揺れを吸収するため、繰り返しの地震に強いことが特徴。
スカイツリーやあべのハルカスなど、多くの高層建築物で採用されています。
「免震構造」とは「揺れを伝えない構造」のこと
基礎と建物の間にゴムなどのやわらかい免震装置を配置し、地盤と建物を物理的に切り離すことで、地震の揺れや衝撃が直接建物に伝わらない構造です。
揺れの周期を長期化することで、建物は地盤よりもゆっくり揺れるため、柱や梁などの構造部分や配管などの被害を抑えることができます。
また、家具・家電の転倒やガラス類の飛散のリスクも低減します。
しかし、コストが高額である、軟弱な地盤には向かない、「活断層型地震」などで起こりやすい縦揺れに対しては効果が薄いといったデメリットもあります。
また、基礎と建物の間に免震装置を設置するため、既存の住宅に後から施工する場合は、建物を持ち上げたり解体したりする必要があり、あまり現実的ではありません。
「耐震構造」「制震構造」「免震構造」の費用を比較
「耐震構造」の費用
現在建築される建物は、等級の差はあるもののすべて一定の耐震基準をクリアした「耐震構造」となっています。
そのため新築の場合、費用は本体価格に含まれています。
また、既存の建物に耐震補強工事を施す場合は、1棟あたり150~200万円程度の費用がかかります。
ただし、余震など繰り返しの地震により建物にダメージが蓄積されていくため、倒壊は免れても結果として修繕に費用がかかる場合もあります。
「制震構造」の費用
「制震構造」は、「耐震構造」の建物の内部に「制震ダンパー」などの制震装置を設置するため、その分追加費用がかかります。
その費用は、木造の一戸建てで1棟あたり50万円程度~。(広さによります)
「免震構造」と比べると比較的やすいコストで導入できるため、新築時のオプションで導入する人も増えています。
装置が揺れを吸収することで建物の損傷や変形が軽減されるため、建物にダメージが蓄積せず、余震の多い大規模な地震や繰り返しの地震にも有効。
既存の住宅に「制震ダンパー」を取り付けることも可能で、その場合は内壁もしくは外壁を一度解体する必要があるため、壁のリフォーム費用として追加で20~150万円程度がかかります。
「免震構造」の費用
「免震構造」は最も建物の被害が少ない工法ですが、初期コストが最も高くなります。
一戸建てなら200~300万円程度。
タワーマンションなどの高層マンションには比較的普及していますが、戸建て住宅ではあまり普及していません。
また、免震装置は定期的なメンテナンスが必要となるためランニングコストも嵩みます。
既存の住宅に後から施工する場合は、建物を持ち上げたり解体したりする必要があり、新築時に導入するよりもさらに高額な費用がかかるため、あまり現実的ではありません。
「耐震構造」と「制震構造」の組み合わせ
新築住宅では高い耐震性能をもたせることが重要です。
木造2階建住宅あれば、熊本地震などの経験も踏まえ、耐震等級3を取得することが有効です。
耐震等級の高い住宅は地震保険の割引制度も利用可能です。
可能であれば「制震ダンパー」をプラスし、「耐震構造」と「制震構造」を組み合わせることで、繰り返しの地震による建物の損傷にも備えることができます。
既存の住宅には、柱や筋交い、体力壁の追加工事などの耐震補強工事を施すことが有効ですが、その際に制震ダンパーを追加し、「耐震構造」と「制震構造」を組み合わせることで更なる効果が期待できます。
まとめ
地震大国日本では、どこに住んでいても地震対策は欠かすことができません。
「地震に強い家」「地震の被害から身を守ることができる家」を実現するため、建築技法は進化してきました。
地震の揺れや衝撃から建物の倒壊・損壊を防ぐため、建築基準法で定められた「耐震構造」だけでなく、近年では「制震構造」「免震構造」といった地震エネルギーを分散することで建物の倒壊や損壊を防いだり、揺れそのものを軽減する技法に注目が集まっています。
地震から身を守ることができる家を選ぶためには、それぞれのタイプをしっかりと理解し、コストも含めたメリット・デメリットを踏まえて家選びをすることが大切です。
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