「土間」とは、床組みをして高く上げずに、そのまま地面に直接施工された床のことを指します。
出入り口から入ってそのまま土足で歩くことが可能で、昔の住宅は勝手口から入る台所を土間にしている家が多くありました。
「通り土間」とはその土間の一種で、玄関から入ってそのまま土足で歩いていける廊下状の土間のことです。
近年、この「通り土間」を戸建てに取り入れたいと希望する人が、少しずつ増えてきています。
今回は、戸建てに通り土間を設けるメリットやデメリットにはどういったものがあるのか、また利用方法についてもご紹介していきます。
まずは、戸建てに通り土間を設けるメリットとはどのようなものがあるのか、3つご紹介していきます。
メリット①土足で利用できる
通り土間のもっとも大きなメリットは、土足で利用できることです。
玄関や勝手口から入って、靴を脱ぐことなくそのまま台所や部屋まで向かうことができます。
お買い物から帰ってきた時に、「買い物袋をいったん置いて」「靴を脱いで」「また荷物を持って」といった動作が不要になる点からも利便性を感じることができるでしょう。
メリット②空間を通り土間で仕切れる
戸建ての中の空間を仕切れることも、通り土間のメリットです。
たとえば、玄関から家の奥の台所まで通り土間を設置した場合、左右の空間を別々の目的で活用することで生活スペースを分けることができます。
二世帯住宅の場合には親世帯と子世帯を通り土間で分ける、あるいは寝室と、リビングや子ども部屋などの音が出るスペースとを分けることなどが考えられるでしょう。
同じ戸建ての中にありながら、別々の空間を生み出せることは、通り土間のメリットといえます。
メリット③夏の暑さを軽減できる
一般的に通り土間は低い位置にあるため、冷たい空気がたまりやすく、ひんやりしているため涼しいのがメリットです。
また土足で歩くことからモルタルやタイル、石などで仕上げられているため、素材自体がひんやりしていることも通り土間があることで空間が涼しくなる理由です。
夏には通り土間に面した部屋の扉を開けておくと、ひんやりした空気を部屋に取り込むこともできるでしょう。
続けて戸建てに通り土間を設けるデメリットにはどのようなものがあるのか、具体的に4つ紹介していきます。
デメリット①汚れやすい
通り土間は、土足で利用するため、汚れやすいことがもっとも大きなデメリットです。
普通の住宅であれば玄関で靴を脱ぐため、家の中に土などの汚れが入り込むことは通常ありませんが、通り土間の場合は玄関からそのまま靴で台所などに向かうため、どうしても汚れてしまいます。
とくに雨の日などは、汚れがひどくなる可能性もあるでしょう。
しかし基本的に通り土間は、モルタルやタイルで施工されていることが多いため、掃除自体はモップなどを利用すればそれほど手間がかかることはありません。
デメリット②居住スペースが減る
戸建てに通り土間を設けた場合、通り土間のスペース分だけ家の居住スペースが減ることになってしまいます。
通り土間を細くすれば少しは居住スペースを増やせますが、あまり細くしてしまうと通り土間のよさが活かせません。
戸建てに通り土間を設置するかを検討するときには、通り土間にどれくらいのスペースが取られ、居住スペースが圧迫されるかを確認し、バランスを考えるようにしましょう。
デメリット③家の中が分断されてしまう
家の中の空間を仕切れることは通り土間のメリットですが、通り土間の設置によっては家の中が分断されてしまうことをデメリットと考える方もいるでしょう。
通り土間をどのように設置するかにもよりますが、家の中を縦断するような形にした場合には、特にそう感じてしまうかもしれません。
たとえば家族の個室が通り土間を挟んで分かれている場合には、お互い何をしているのか様子がわからなくなってしまう可能性があります。
同じ戸建てに住んでいながら、通り土間を挟んで別の家のように感じることもあるでしょう。
通り土間を家に設置するときには、家族のコミュニケーションが薄くならないよう、部屋割りをどのようにするのかをよく考えるようにするとよいかもしれません。
デメリット④冬は寒くなりやすい
モルタルやタイルで仕上げられ、地面に近いことから夏は涼しい通り土間ですが、冬は底冷えする可能性があることがデメリットといえます。
通り土間はオープンスペースになっているため暖まりにくく、そもそも居住空間ではないため、わざわざ光熱費をかけて暖めるのはもったいないと感じる人も多いです。
また通り土間は生活スペースではなく通路であるため、冬に寒くなることが気にならない人も多いようです。
もしくは施工するときに、しっかりと断熱材を入れておくと、冬の寒さを軽減することもできるでしょう。
それではここからは、戸建てで通り土間をどのように利用しているのか、実例を紹介していきます。
<利用方法①台所を中心に玄関と勝手口をつなぐ>
通り土間のもっとも多い利用方法は、戸建ての玄関から奥にある台所まで、家の中を縦断させて設置する方法です。
玄関から家に入り、靴を脱ぐことや、そのまま荷物を置くことなくそのまま台所まで持って行けるため動線がよくなります。
通り土間をまっすぐ設置した場合、玄関から台所まで視界が通り、空間が広く見えることもポイントです。
台所に直接入れる勝手口を設ければ、さらに使い勝手がよくなるでしょう。
<利用方法②オフィスと居住スペースを分ける>
自宅にオフィスを構えた場合、玄関から入って通り土間を挟み、オフィスと居住スペースを分けてしまうのもおすすめの利用方法です。
居住スペースに入るときには靴を脱いで上がり、オフィスへは通り土間をそのまま土足で進んで向かえるようにしておくと、仕事で来客があった場合でも、スムーズに案内できます。
自宅とオフィスを通り土間で区切るように配置すると、プライベートと仕事を完全に分けることが可能になるのです。
<利用方法③親世帯と子世帯を分けて通り土間でつなぐ>
玄関を挟んで親世帯と子世帯でそれぞれ別の戸建てを建て、その間を通り土間で結ぶ利用方法もあります。
玄関から入ったスペースは共有空間として利用し、そこからそれぞれの戸建てに向かって通り土間がのびているイメージです。
戸建て自体は別々ですが、通り土間でつながっていることにより、2世帯が連携しているように感じられるでしょう。
<利用方法④壁に沿って通り土間を設置する>
通り土間を家の中を貫くように「縦断させる」のではなく、「壁に沿って設置」すると家を分断させることなく利用できます。
玄関から家に入り、そのまま壁に沿った通り土間を進むと、壁と反対側に部屋が並んでいるイメージになります。
個室以外のリビングなどは扉をつけない造りにしておくと、空間の広がりも演出できます。
部屋と反対側の壁には窓を設けておくことで、景観を取り入れ採光性をよくすることも可能です。
通り土間とは、玄関から靴を脱ぐことなく戸建ての中を移動できる便利なスペースです。
設置する場所によっては部屋を目的に応じて仕切ることが可能で、メリハリをつけられるなどのメリットがあります。
一方土足で入ることで家の中が汚れやすい、あるいは空間が分断されて、場合によっては家族の様子がみえなくなるなどのデメリットも考えられます。
戸建てに通り土間の設置を検討するときには、目的と配置を念頭においてお考えください。