土地を購入したら、すぐにマイホームの建築に進めると思っている方は少なくないのではないでしょうか。
実はその前におこなうべき大切なことがあります。
それが今回、この記事で取り扱う『地盤調査』です。
これから地盤調査の必要性と、もし購入した土地の地盤が弱かった場合どうすればよいのかに注目して解説していきます。
あなたが購入しようとしている土地、あるいは所有している土地が安心・安全な土地であるかどうかご存知でしょうか。
ぱっと見ただけでは、その土地の地盤がどうなっているのかはわかりません。
一見して表面が頑丈そうに見える土地でも、その奥底はやわらかい地盤であることも少なくありません。
また購入する土地が、昔どのような土地だったかご存知でしょうか。
地名に『川』や『溝』『沼』などが付くエリアは水に関係する土地だった可能性が高く、地盤が弱いことがしばしばあります。
そのため家を建てる前に、購入した土地が家を建てるのに適しているのかを調べる必要性があるのです。
その調査のことを『地盤調査』と呼びます。
地盤が弱いとどのような恐ろしいことが起こるのか、注目していきましょう。
①地盤沈下・不同沈下が起こる
地盤が弱い土地では、地盤沈下あるいは不同沈下が起こる可能性があります。
地盤沈下・不同沈下とは、簡単に言えば住宅の重みに耐えられなくなった土地が沈んでいく現象のことです。
購入した土地にせっかく建てた住宅が、地盤が弱いために沈んでいってしまうのです。
※地盤沈下と不同沈下の違い
地盤沈下は土地に対して水平に均等に沈んでいくのに対し、不同沈下は建物が傾きながら沈んでいく現象を指します。
建物の荷重はどこか一方に偏っていることが多く、一般的によく起きるのは不同沈下のほうだといわれているのです。
また、一見して同じ地盤に見える土地でも、切土や盛土などにより異なる性質の地盤である場合があります。
その際にも、地盤沈下よりも不同沈下が起きやすい傾向にあります。
②液状化現象が起こる
大きな地震が起きた際に、液状化現象が起こる可能性があります。
記憶に新しい東日本大震災でも、この液状化現象が多く起こりました。
液状化現象とは、地下水位の高い砂地盤が振動により液体状に変化する現象です。
これにより、住宅のような大きい構造物は沈んだり倒れたりしてしまい、逆に小さな構造物(上・下水管など)は浮き上がってしまいます。
購入した土地でこういった事態を防ぐためにも、地盤調査の必要性がご理解いただけたと思います。
購入した土地を地盤調査する必要性はわかりましたが、どのようにして地盤調査をおこなうのでしょうか。
地盤調査で一般的によく用いられる方法として、スウェーデン式サウンディング試験と標準貫入試験(通称:ボーリング調査)があります。
ここでは、スウェーデン式サウンディング試験に注目してご説明いたします。
スウェーデン式サウンディング試験とは、機械を用いて地面に対し垂直に棒を刺していき地盤調査する方法です。
スウェーデン式サウンディング試験では、該当する土地の5箇所(建物を計画している4隅とその中央)においておもりを順に加え、100kgに達しても貫入しない場合は、次にどのくらい回転させたら貫入するかを25cmずつ堀り進めて調査を行います。
そうして難なく掘れない深さ(地盤の強い深さ)まで掘り進めていくことで、そこが地盤の強い土地といえるのかを調査できるのです。
最終的にはこのスウェーデン式サウンディング試験に加え、近くにある川など水場の情報や近隣の住宅の状態など現地調査も踏まえ、総合的に判断されます。
そして、スウェーデン式サウンディング試験などの地盤調査の結果、地盤が強い場合には特に問題ありませんが、弱い場合には地盤改良が必要です。
地盤改良方法は、砕いた石を地盤に流し込む砕石パイル工法や木材を地盤に打ち込む木杭工法など、日々さまざまな方法が生み出されています。
購入した土地の状況に応じた方法を採用することが、安心・安全に繋がっていきます。
どの方法が適しているのか、施工業者に確認するのがいいでしょう。
購入した土地の地盤改良とひと口にいっても、その方法はさまざまです。
地盤調査によって導き出されたN値と呼ばれる地盤の強さに応じて、また軟弱な地盤がどのくらいの深さまであるかなどによって、適切な地盤改良をおこなう必要があります。
ここでは代表的な地盤改良の方法『表層改良』『柱状改良』『鋼管杭改良』についてご紹介します。
軟弱地盤が1m~2m程度と浅い場合に適しているのが表層改良になります。
表層改良は軟弱地盤の土をすき取り、固化剤を混ぜた土を良好な地盤の上に敷くことで地盤を強固にする手法です。
その名前のとおり、地盤の表層を改良する方法というわけです。
なお、この固化材と混ぜた土は植物などに影響もなく、地盤改良後も植栽やガーデニングなどを楽しむことができます。
表層改良の一般的な費用は、改良の程度にもよりますが30~50万円程度といわれています。
柱状改良は良好地盤のある深さまで掘削しながら、ミルク状の固化材を注入していきます。
そうすることで直径60cm程度のコンクリートの柱を地中に造り上げる手法です。
表層改良と比べ、さらに深い地盤(2~8m)を強固にするときに用いられます。
とくに先述の、不同沈下の恐れがある土地に対しておこなわれます。
コンクリートの柱が良好な地盤の深さまで到達することが条件となりますが、この手法は柱の周囲の土との摩擦力も合わさり、より強固に建物を支えることが可能です。
柱状改良は一般的に80~100万円前後の費用を要するといわれています。
また施工には、表層改良に比べ大型の機械を使用するため、都内などの狭小地では対応できない場合もあります。
事前にしっかりとご確認ください。
鋼管杭改良とは、もともとビルなどの大きな建物を建設するために生み出された工法を戸建て住宅に応用した手法です。
地盤が軟弱な場合に、鋼管杭を地中深くに打ち込むことで建物の自重をしっかりと支えることができるようにする工法を指します。
工期が短く、平均して1~2日程度で終わります。
また狭小地でも対応できるため、表層改良や柱状改良で対応できない場合に用いられることが多いです。
費用は打ち込む長さにもよりますが、5~6m程度の場合およそ110~140万円程度かかるといわれています。
地盤調査の結果、地盤改良が必要ないことが一番ではありますが、地盤改良が必要になることは決して少なくありません。
事前に地盤改良費用を資金計画に組み込んでおくことで、思わぬ出費にも備えることができますので、頭に入れておくようにしましょう。
東京都内においても、地盤が強いエリア・弱いエリアは存在します。
都では、東京防災という地域特性や都市構造などをまとめた防災ブックを発行しています。
無料でダウンロードできるので、土地の購入や地盤改良の必要性を考える際にはこちらも参考にしてみるといいでしょう。
購入した土地の地盤調査をする必要性はしっかりと理解いただけたでしょうか。
地盤が強いからいい、弱いからだめではなく、適正な処置をすることでしっかりと購入した土地を有効活用することができるのです。