親(被相続人)が亡くなり、子ども(相続人)がアパートなどの収益物件を相続する際に「相続税」がかかるケースがあります。
規模によっては高額な相続税が発生し、相続した財産を売却せざるを得ないといったことも考えられるのです。
そういったことを防ぐために、相続税対策として法人化して相続する不動産の所有を分散させる方法があります。
この記事では不動産相続時に法人化するメリットとデメリット、法人化する際の注意点について解説します。
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不動産相続時に法人化するメリットについて解説する前に、相続税とは何かをご説明します。
相続税とは、相続や遺言によって遺産を取得した際に、その遺産に課される税金です。
相続税には基礎控除があり、その控除額を上回る遺産を受け取る方にのみ課税されるため、相続した財産すべてに税金がかかるわけではありません。
基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)」で算出できます。
仮に相続人が3人である場合「3,000万円+600万円×3=4,800万」となり、4,800万円を超す遺産を受け取ったときのみ、相続税が課される仕組みです。
つまり、この基礎控除額を超えないよう、被相続人が所有している財産を減らしておくことが相続税対策となるのです。
そこで、不動産相続時に法人化すると相続税対策につながるメリットが発生します。
どのようなメリットが生じるのか、以下で解説します。
不動産で得る所得を「個人」と「法人」に分散できる
不動産相続時に法人化する大きなメリットといえるのが、所得の分散でしょう。
法人化することで、家賃などの不動産所得を「個人」と「法人」に分けることができます。
相続税は「個人の財産を相続する場合にかかる税金」であるため、法人に分散した財産は相続財産には含まれません。
つまり、個人が法人を設立し、所有する財産を法人に分散させることで、自身の持つ財産を減少させることができるのです。
それにより、自身が亡くなったときに相続する財産を、基礎控除額の範囲内に近づけておくことができます。
財産を相続人へ移転でき、贈与税の負担を減らせる
通常、一定額を上回る財産を贈与した場合には贈与税がかかります。
これは贈与する相手がたとえ家族であっても同じです。
そこで法人を設立し、子ども(相続人)を役員にするといった方法があります。
役員である子どもに役員報酬という形で支給すれば、会社からの報酬となるため「贈与」にはならず、贈与税がかかりません。
つまり法人化することによって、贈与税の課税対象とならずに「相続人へ財産の移転」が可能となるのです。
このように不動産相続時に法人化することで、相続税と贈与税の対策ができます。
不動産相続時に法人化するデメリット
相続税対策として法人化することのメリットを解説しましたが、一方でデメリットも存在します。
ここでは法人化することによって生じるデメリットを解説します。
赤字であっても納付が必要な税金がある
個人事業主であれば、売上が赤字の場合には税金を納める必要はありません。
しかし法人の場合には、たとえ赤字であっても納付しなければならない税金があるのです。
それは地方税の「均等割」とよばれるもので、所得に関わらず従業員数や資本金に応じて課税されます。
最低でも年間7万円程度かかり、必ず納める必要があります。
法人設立には手続費用と手間がかかる
法人を設立する際には、法律に従った手続きをおこなう必要があります。
定款とよばれる基本的な会社のルールをまとめたものや登記申請書など、多くの書類を準備しなければなりません。
これらの手続きを司法書士に頼む場合は、司法書士へ報酬を支払います。
そのため法人設立の手続きには、手間とお金が必要となります。
法に則った法人運営が必要
法人とは「法律によって権利義務を取得することを認められた組織」という意味があり、設立した以上、法律に則った事業運営をおこなわなければなりません。
例えば法人運営では、個人事業と違い会計処理がより複雑になります。
自分で会計処理ができない場合、人を雇ったり会計ソフトを導入するなどの対応が必要です。
また廃業時には廃業届を提出すれば済む個人事業主とは異なり、法人の場合には解散登記・清算結了登記をおこなう必要があります。
不動産相続時に法人化するときの注意点
法人化と相続の関係や法人化のメリットとデメリットはご理解いただけたでしょうか。
ここでは法人化するにあたり、気をつけるべきポイントをご紹介します。
3つの運営形態がある
不動産相続時に法人化する場合、大きく分けて以下3つの運営形態があります。
不動産管理会社(管理料徴収方式)
設立した会社が不動産の管理や集金などをおこない、不動産オーナーから管理料を受け取る方式です。
賃料の5%前後が、管理料の適正価格といわれています。
不動産管理会社(一括借上げ方式)
設立した会社が個人から賃貸住宅を一括して借り上げ、他の入居者に転貸します。
賃料は設立した会社が回収し、そこから不動産の管理料を引いて不動産オーナーに支払う方式です。
手数料は満室時の10〜15%ほどと、管理料徴収方式よりも高額になります。
しかし空室が増えると、回収した家賃がオーナーへの支払い賃料を下回ってしまうというデメリットもあります。
不動産保有会社
設立した会社が賃貸住宅の所有者となり、賃料などの収入は会社に入ります。
なお土地の所有者は、会社から地代を受け取る仕組みです。
賃料は全額不動産保有会社に入るため、所得税の分散効果は3つの中で最も大きくなる反面、建物の所有権移転をおこなう必要があるため、設立の難易度が高くなるといった注意点があります。
いずれの方式にもメリット・デメリットが存在するため、設立と運営にかかる費用や、どれほどの節税効果が得られるかなどを事前に比較することが大切です。
資本金は1,000万円未満にする
法人設立の際、資本金が1,000万円を超すと消費税の申告が必要となります。
相続税対策として不動産相続時に法人化する場合には、資本金を1,000万円未満にすると良いでしょう。
被相続人ではなく相続人を株主にする
仮に相続人が子どもであれば、子どもを株主とします。
なぜなら親(被相続人)が株主になってしまうと、将来親が亡くなった場合に、所有していた会社の株式が相続財産に含まれてしまうためです。
その結果、節税目的で財産を法人に移転し相続財産を減らしたにも関わらず、会社の株式が相続財産となり、相続税が課されてしまう可能性があります。
また株主を親にすると、株主の認知症リスクも考えられます。
すでに資産を誰に承継するか決まっている場合には、その承継予定者を株主としましょう。
そうすることで、資産承継先を先に決めるといった資産承継対策ができます。
不動産相続時に法人化するタイミング
不動産相続時に法人化すると、毎年申告をおこなうための税理士費用などコストがかかります。
そのため法人化によって節税が期待できるのは、相当額以上の収入がある場合に限られるのです。
一般的には不動産所得が1,000万円以上の方が対象と言われていますが、家族構成や財産状況によって異なります。
法人を設立する前に、法人と個人ではどちらのほうがメリットがあるか試算するようにしましょう。
まとめ
不動産相続時に法人化する場合のメリットやデメリット、注意点について解説しました。
法人化することで所得分散がおこなえ、相続税の負担を軽減することができます。
しかし法人設立には手間と費用、法に則った運営が必要といったデメリットがあるのも事実です。
それらをすべて認識したうえで、相続税対策として、法人化を検討してみてはいかがでしょうか。
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