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建築基準法で定められた日影規制と北側斜線制限、天空率とは?

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建築基準法で定められた日影規制と北側斜線制限、天空率とは?

建築基準法で定められた日影規制と北側斜線制限、天空率とは?

建物を建てる際、頻繁に発生するトラブルが「日照権」に関するものです。
「日照権」とは「日当たりを確保する権利」のこと。
1970年代、マンションの建設が盛んになったことで、近隣住宅の住民と日照権をめぐるトラブルが頻出しました。
このようなトラブルを未然に防ぐため、建築基準法では「日影規制」や「北側斜線制限」といったルールが定められてます。
また、実情に則した斜線制限の緩和措置が「天空率」で、これは2002年の建築基準法改正で導入された比較的新しい概念です。
今回のコラムでは、それぞれの規制や制限がどのように定められているのか詳しく解説していきます。

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建築基準法で定められた「日影規制」(にちえいきせい・ひかげきせい)とは

建築基準法で定められた「日影規制」(にちえいきせい・ひかげきせい)とは

「日影規制」とは、近隣の住宅の日当たりを確保するために1976年の建築基準法改正で導入されたルールです。
隣地に影を落とす時間を一定時間以内にするというもので、規制の対象や内容は用途地域によって異なります。
「用途地域」とは、地域ごとに土地の用途を分類し、それぞれルールを定めたもの。
細かく分けると13種類に分かれていますが、大きく分けると「住居系地域」「商業系地域」「工業系地域」の3種類があります。
住居系地域は、第1種・第2種低層住居専用地域、第1種・第2種中高層住居専用地域、田園住居地域、第1種・第2種住居地域、準住居地域の8地域。
住居系地域では基本的に住居が優先されるため、大きな工場や商業施設は建てられません。
日影規制は快適な住環境を守るための規制なので、住居系地域のみで適用されます。
経済活動を中心とする商業系地域と工業系地域では適用されません。

対象となる建物

日影規制は、建物が一定の高さを超える場合に適用されます。

●第1種・第2種低層住居専用地域と用途地域の指定のない地域(軒の高さが7mを超える建物)、または3階建以上(地下を除く)の建物
この「軒の高さ」とは、「地面から軒を支える構造材の上部までの高さ」のことです。

●その他の住居系地域(軒の高さが10mを超える建物)

規制の内容

日影規制の内容は「3-2h / 1.5m」のように表示されます。
「1.5m」は隣地境界線から垂直に1.5mの高さで計測することを表しています。
「3-2h」は、日影になる時間を敷地境界線から5m~10mまでのエリアは5時間、10mを超えるエリアは3時間以内に納めましょうという内容の規制です。
季節によって日影になる時間は異なるため、1年で最も影が長くなる冬至の日を基準として、午前8時~午後4時までの8時間の間で計測します。
(北海道の場合は午前9時~午後3時)
測定する地面からの高さを「測定水平面」といい、これは用途地域ごとに変わります。
第1種・第2種低層住居専用地域の場合は1.5m、それ以外の住居系地域では4mまたは6.5mとなっています。
天井高などにもよりますが、大体地面から1.5mは1階部分の窓、4mは2階部分の窓くらいになります。
つまり、戸建てなど低層住宅中心のエリアではお隣さんの1階部分の日当たりにも配慮し、マンションなどが建てられるエリアであっても2~3階部分の日当たりには配慮しましょうということになります。
用途地域の指定がない地域では、1.5mか4mのどちらかを地方自治体が定めています。
また、制限される日影となる時間についても全国一律の基準ではなく、「3-2h」「4ー2.5h」「5-3h」の3種類から各自治体が定めています。
建物を建てる土地の詳しい規制内容については、役所の「建築指導課」などに問い合わせて調べる必要があります。

注意点

商業系地域や工業系地域など日影規制の対象外の地域であったとしても、隣接する土地が住居系地域である場合には注意が必要です。
日影規制はあくまで隣接地の日照権を保護するための制度ですので、影が落ちる地域の規制が適用されることになります。

「北側斜線制限」の基本知識と建築基準法で定められた日影規制との関係

「北側斜線制限」の基本知識と建築基準法で定められた日影規制との関係

日当たりの良い南側に庭を広くとりたい場合は、敷地の北側ギリギリに建物を寄せて建てた方が効率的ですが、そうすると敷地の北側にある住宅の日当たりが妨げられてしまいます。
そこで、北側の隣地の日照権に配慮するように定めたルールが「北側斜線制限」です。
「斜線制限」とは、地面あるいは地面から一定の高さの地点から斜めの線を引き、建物をその下に納めるというもの。
街を歩いていると、建物の上部が階段状になっていたり、斜めに切り取られたようなデザインになっているものがありますが、これは斜線制限によるものです。
斜線制限には「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」の3種類あり、それぞれ対象や規制内容が異なります。
一戸建ての北側の部屋の天井部分が斜めになっていたり、マンションのルーフバルコニーが北側に多く設置されていることがありますが、これは北側斜線制限によるものです。
北側斜線制限は主に住宅街を対象にした規制で、第1種・第2種低層住居専用地域と第1種・第2種中高層住居専用地域、田園住居地域のみに適用され、それ以外の住居系地域や商業系地域や工業系地域は適用されません。
ただし、上で説明した「日影規制」の対象となるケース(軒の高さが10mを超える建物)は、第1種・第2種中高層住居専用地域と田園住居地域では適用されません。

「北側斜線制限」の具体的な規制内容

敷地の北側境界線から垂直に一定の高さをとり、そこを始点として1:1.25の勾配を付けて斜めの線を引き、建物をその中に納めます。
斜線の始点となる高さは、第1種・第2種低層住居専用地域と田園住居地域では地面から5m、第1種・第2種中高層住居専用地域では10mとなります。

注意点

「北」には方位磁石の示す「磁北」と「真北」があり、この2つには若干のずれがあります。
「北側斜線制限」の基準となる「北」は、「磁北」ではなく「真北」。
地図に示されている方位が真北とは限らないので、設計の際に確認する必要があります。

「天空率」の基本知識と建築基準法で定められた日影規制との関係

「天空率」の基本知識と建築基準法で定められた日影規制との関係

これまでは「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」などのルールによって、近隣住宅の日当たりや採光、通風など快適な住環境が維持されて来ました。
一方で、建物の見た目や使いやすさ、効率的な土地活用の面から考えるとデメリットもありました。
天井の一部が斜めになることで居住性が悪くなったり、マンションなどでは上階の戸数が少なくなったり、容積率を使いきれず収益率が下がる、ほんの一部が斜線に引っかかるだけでも建築確認申請が通らないので見た目も悪くなってしまう、などのデメリットがありました。
また、太陽光パネルを設置したい場合、北から南へ片流れ形状の屋根にすると発電効率が高まりますが、その際も北側斜線制限がネックとなることがありました。
そこで、2002年(平成14年)の建築基準法改正で、斜線制限の緩和措置として「天空率」という概念が導入されました。
「天空率」とは、簡単に説明すると、地面から建物を見上げたときに「空がどれくらい見えるか」という考え方です。
天空率を使うと、空が見える割合が従来の規制を守った場合よりも大きい場合には、斜線制限を無視しても良いことになりました。
つまり「斜線制限と同じくらい空の広さが確保されていれば良い」というルールになったのです。
「斜線制限」のように寸法や角度などを指定したルールを「仕様規定」といいます。
これに対して、「天空率」のように性能に着目して、目的に応じて柔軟に定めたルールを「性能規定」といいます。
「天空率」のおかげで、周辺の日当たりに配慮しつつも、より自由度の高い設計が可能になりました。

天空率を使いたい場合の注意点3つ


●煩雑な計算になるため、工務店によってはなかなか対応してくれないケースもあるようです。
工務店選びの際には、こうした新しい概念にも柔軟に対応してくれる工務店を選ぶことが重要です。
●役所の担当者も慣れていないことも多く、建築確認申請に従来よりも1~2週間程度長くかかるケースがあるようです。
●天空率によって規制が緩和されるのは「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」などの斜線制限のみとなります。


「日影規制」「高度地区」「絶対高さ制限」などは緩和されませんので注意が必要です。

まとめ

建物を建てる際は、限られた敷地面積をできる限り有効活用したいと思うもの。
しかし、無用な近隣トラブルを避けるためにも近隣住宅に配慮した設計にしなければなりません。
日影規制や斜線制限などのルールは、トラブルを避け、住みやすさを維持するためのもの。
「天空率」は斜線制限の緩和措置の一つで、目的に応じた「性能規定」です。
これにより、隣地の日照権に配慮しつつ、より自由な設計が可能になりました。
土地にかかる規制の内容をあらかじめ調べておき、敷地周辺の建物の形状をよく観察してみると、建設可能な建物の大きさや形状をおおまかにイメージすることができます。
設計に入る前に、一度土地の周りを散歩してみると良いでしょう。

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