2019年12月31日WHOは、中国から「河北省武漢市で原因不明の肺炎を起こした感染者集団が発生した」という報告を受け、以後、この新型コロナウイルス(COVID-19)による感染があっという間に世界中に拡大。
2020年1月30日、WHOは新型コロナウイルスの流行が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(パンデミック)」であると宣言しましたが遅きに失した印象は否めません。
世界中で広がる新型コロナウイルス感染症の影響で、インバウンド消失と外出自粛の浸透により「宿泊業・飲食業・アパレル関連・食品製造・サービス業・娯楽業・食料品卸・機械製造卸・出版」 などさまざまな業種で倒産件数が増加しており、今もその収束は見えない暗い状況です。
今回は、新型コロナウイルスが消費意欲にどのような影響を与えるのか、そしてアフターコロナで不動産取引や業界にどのような影響を与えるのかを考えてみたいと思います。
<すでに影響が出ている業種など>
新型コロナウイルスの流行は、人々から行動の自由を奪いました。
そのため直接人にサービスを提供する飲食業・サービス業・娯楽業・ブライダル関連・アパレル関連、さらに外国人の移動制限によるインバウンドの消失により旅行業・宿泊業・運輸業(主に人を乗せて移動するもの)などが大きな影響を受けています。
学校の長期休業により、食品製造業や食品卸売業も影響を受けていますし、消費の落ちこみが結果的に農業や漁業などの第一次産業にも打撃を与えていることも見逃せません。
また、国際便減少により海外からのサプライチェーンが寸断され、製造業や建設、建築分野も徐々に追いつめられています。
時間が経過するにつれて倒産する事業所が増え、さらに多くの企業が業績不振に陥り、結果的に労働者が手にする賃金も減ってしまうと危惧される危機的状況です。
<東京五輪(東京オリンピック)延期の影響>
すでに2021年に延期された東京オリンピックですが、この延期が直接経済に与える影響は小さいと予測されています。
オリンピックに必要なインフラや、関連施設はすでに完成しており、オリンピック延期により国民が直接被害を受けることはありません。
ただ、移動自粛や移動制限により巨大なインバウンド収入が消失していますので、そちらの影響の方がオリンピック延期よりもはるかに大きなインパクトになっています。
<政府決定の緊急経済対策の内容は?>
新型コロナウイルスの感染拡大により、国民生活に影響が出始めています。
日本政府もただ手をこまねいて見ているだけではなく、経済対策などを打ち出していますが、国民からの反応はいまひとつ。
PCR検査体制の強化、症状がある方への適切な対応、マスク対策(俗にいうアベノマスク発送)などのほかに、雇用調整助成金の特例措置の拡大という対策をしています。
また、強力な資金繰り対策、生活困窮者自立支援制度の利用促進等による包括的支援の強化など、総額約108兆円規模の緊急経済対策を発表しましたが、その効果についてまだはっきりしたことはわかりません。
<リーマンショック後の不動産業界への影響>
過去に起きた金融危機といえば、記憶に新しいのが「リーマンショック」でしょう。
このとき、不動産業界はどのような影響を受けたのでしょうか?
2008年の日経平均株価は金融危機発生時から約40%下落、ところが東京23区の賃貸マンションの平均賃料は約17%程度しか下落しませんでした。
データの元となる建物面積の平均は約35㎡で、ワンルーム以外の広い賃貸物件も含まれています。
さらに詳しく見てみると、40㎡以下の狭い賃貸物件の下落幅は約13%となっており、株価の大暴落ぶりにくらべるとワンルームの賃貸料は、そこまで大きな影響を受けないことがわかります。
<金融危機が起きても賃貸需要に変化なし>
人が生きるうえで、住居は必要なものです。
たとえ金融恐慌が起きたとしても、都市部に住む方々が全員地方に引っ越すような事態はあり得ません。
総務省が実施する国税調査のデータをみると、東京都内23区の単身世帯の人数はどんどん増加しており、2000年調査時の1,639,827人から2015年には2,424,966人と、785,139人の大幅増加となっています。
つまり、ワンルームの需要は減少するどころか毎年増加しているわけですから、不況知らずのかなり手堅いビジネスといえるでしょう。
<影響を受けるのは高級物件>
会社員やOLが住むワンルームは、継続して居住するのが前提となっており、家賃変動が少ないため新型コロナウイルスの影響はさほど大きくないのですが、問題は富裕層が所有する高額物件です。
利用しているのは資金に余裕のある方がメインですし、高い賃料が払えずに引っ越したり分譲マンションの売却なども考えられます。
空室増加や賃料下落、売り物件増加による価格下落などが考えられ、富裕層向けの高級物件はアフターコロナで大きく値崩れするリスクがあります。
物件をオフィスや商業施設、宿泊所として利用している方もコロナウイルスの影響で空室増加や賃料下落などのリスクを考えておくべきでしょう。
とくに商業施設の入っているビルは、今後、経済状況がもっと悪化すると賃料が入ってこなくなる可能性もあります。
<フラット35は返済方法を変えることができる>
新型コロナウイルスにより、収入が大幅にダウンしたご家庭も続出しています。
「収入減で住宅ローンの支払いが困難になる」そんなお悩みをおもちの方のなかで、フラット35を利用している方は、
・返済期間の延長などの返済特例
・一定期間だけ返済額を軽減する中ゆとり
・ボーナス返済の見直し
この3つの対策が可能です。
返済期間延長は、例えば当初35年で住宅ローンを組んだ方で、すでに15年返済が終わっている場合は残り20年がローン期間になりますよね。
この20年を、25年や30年に延長して毎月の返済額を引き下げるのが、「返済期間延長」になります。
また中ゆとりは、例えば3年間だけ毎月の返済額を減らし4年後に返済できなかった金額を増額して対応する方法です。
ボーナス返済見直しは、ボーナス時にまとまった金額を返済していた方向けの対策になります。
もし、ボーナス時の返済が難しい場合はその分を毎月返済額に振り分けることができ、ボーナス払いの負担を大きく軽減できます。
このような方法を使えば、家を手放すことなく住宅ローンの支払いを続けることができます。
<フラット35以外の住宅ローンではどんなことができる?>
フラット35以外の住宅ローンの場合も、上記のような対策をおこなっていますが、返済に困ったらまずはローンを組んだ金融機関窓口で相談するのが一番。
もし「どう対応すればいいのかわからない」という方は、一般社団法人全国銀行協会でも、相談窓口やカウンセリングサービスを設置していますので、ぜひ利用してください。
住宅ローンの支払いに行き詰ったときは、とにかく一刻も早い対策が重要です。
<住宅ローン等の返済猶予等について政府の対応>
令和2年3月31日に、厚生労働省社会・援護局地域福祉課から「個人の住宅ローン等について、返済猶予等の相談に応じるなど必要な支援を実施している」という通達が、各都道府県に事務連絡として入っています。
政府も「新型コロナウイルスに関する金融庁相談ダイヤル」を設置し、住宅ローン返済に悩む方々の相談にのっており、金融機関にも柔軟に対応するよう要請しているようです。
このような未曾有の状況下のため、住宅ローンの返済で困っている方はぜひ一度金融機関の窓口で相談してください。
新型コロナウイルスの世界的な大流行で、日本の経済が大きな打撃を受けているのは事実です。
ただ、会社員やOLが主な入居者となっているワンルームの平均家賃は、リーマンショック後に大きく下落することはありませんでした。
今回のコロナショックやアフターコロナでも、不動産相場が大きく下落することは(一部物件を除き)ほとんどないと予測されます。
ただ、住宅ローンを支払っている方は影響を受けるリスクが大きいため、政府も対策を進めており、ローン支払い方法の変更など柔軟に対応可能です。
困っている方は、ぜひ一度相談してみてください。