みなさんは「東京ゼロエミ住宅」という言葉をご存知ですか?
まだ聞きなれないこの施策は東京都が推進しており、環境に配慮した住宅造りを進めるものです。
昨今、環境汚染によって起こる温暖化などが世界中で非常に問題視されています。
日本でも国を挙げて施策に取り組んでいますが、東京都では特に環境問題に力を入れており、この東京ゼロエミ住宅もそのひとつです。
この記事では、東京ゼロエミ住宅とはどんなものか、環境に対するメリットの他にも、認証制度を満たすことで受けられる住宅補助などについて説明していきます。
東京都が掲げる環境基本計画では、2030年までに家庭部門におけるエネルギー消費量を2000年時点と比べて30%削減することを目標としています。
その実現のためには、断熱性能など住宅そのものの性能を向上させる必要があります。
しかし東京都では「狭小な土地が多い」「地価が高い」などといった理由から住宅の建て替えがおこなわれる件数が少なく、住宅の環境性能向上が進みにくい傾向にありました。
その対策として東京都が打ち出した施策が、この東京ゼロエミ住宅です。
ゼロエミとは「ゼロエミッション」の略語であり、ここで言うエミッションとは環境を汚染したり、気候に狂いを生じさせたりする(温暖化など)廃棄物を排出することを指します。
つまり東京ゼロエミ住宅とは、環境に優しい住宅造りを目指す施策ということです。
具体的に東京都の試算によると、東京ゼロエミ住宅はそれ以外の住宅より、およそ3割も省エネルギー性能が向上すると言われています。
断熱性能の高い窓や断熱材の利用・高い省エネ性を有した家電などを取り入れることで、住宅内の冷暖房効率がよくなるなど環境への貢献以外にもライフサイクルコストの削減につながるメリットがあります。
また、快適な室温を維持できるため、高齢者のヒートショックによる死亡事故を未然に防ぐことにもつながると言われています。
では、東京ゼロエミ住宅の水準とは一体どれほどのものなのでしょうか。
省エネ性能に対する政府の取り組みのひとつに、ZEH(ゼッチ)というものがあります。
この政府が推進しているZEHが一時消費エネルギー量削減を20%としているのに対し、東京ゼロエミ住宅の水準はそれを上回る30%としています。
また、再生エネルギー設備(太陽光発電など)は容量を問わず設置するのが好ましいと設定されています。
東京ゼロエミ住宅にすることで、東京都から住宅補助を受けることができます。
その金額は、なんと一戸につき最大170万円と大きなものです。
では、この東京ゼロエミ住宅として認証されるにはどのような要件があるのでしょうか。
東京ゼロエミ住宅の認証制度では、断熱性能と省エネ性能を要素ごとにしっかりと明示し、わかりやすくなっています。
住宅補助を受けられる認証制度に必須な要素は下記のとおりです。
■認証制度を満たす仕様:断熱性能
省エネ建材等級(窓ラベル)4★
例:アルミ樹脂複合サッシ+LOW-e複層ガラスなど
■認証制度を満たす仕様:設備
①照明:全室LEDを設置
※玄関、トイレ、洗面・脱衣所、廊下、階段のうち一箇所以上は人感センサー付きを使用。
②空調機:リビングなど住宅で一番利用される部屋に高効率エアコン(省エネラベル4★または5★)の設置
③給湯器:高効率給湯器(潜熱回収型給湯器、電気ヒートポンプ給湯器など)の設置
※潜熱回収型給湯器・電気ヒートポンプ給湯器といってもわかりにくいですが、それぞれ代表的な商品として潜熱回収型給湯器は「エコジョーズ」、電気ヒートポンプ給湯器は「エコキュート」があります。
④浴槽:高断熱浴槽の設置
※追い炊き機能付きの場合のみ。
⑤配管方式:ヘッダー方式を採用
※ヘッダー方式とは、銅管などを利用せず継手のない工法です。
錆による漏水などが起きず、維持管理がしやすいため認証制度に組み込まれています。
■認証制度を満たす仕様:再生エネルギー設備(通称:再エネ設備)
容量を問わず、可能な限り設置することが望ましいと定められています。
※再生エネルギー設備とは太陽光発電などを指し、狭小地の東京都内の土地ではその性能を発揮できない場合があります。
そのため「可能な限り」という注釈がついています。
基本的に上記に挙げた仕様は、すべて満たす必要があります。
なお、上記仕様以上の仕様とすることは可能です。
また、アパートやマンションなどの集合住宅は、全戸でその仕様を満たす必要がありますので注意が必要です。
ここからは、先述の認証制度を満たす住宅を建てる際の助成金を受けるまでに、注意が必要な点をいくつか取り上げていきます。
なかには助成金を受けることができなくなってしまう場合もありますので、しっかりと学んでいきましょう。
助成金を受けられる要件を満たしていても、東京ゼロエミ住宅の助成金を受けると併用できない助成金事業もあります。
以下、代表的な助成金事業をできる・できないに分類しましたので参考にしてください。
①東京ゼロエミ住宅と併用できる助成金事業
・次世代住宅ポイント制度…最大35万円分の助成金
・地域型住宅グリーン化事業…最大110万円分の助成金
②東京ゼロエミ住宅と併用できない助成金事業
・ZEH化による住宅における低炭素化促進事業
・二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 集合住宅(低層・中層)における低炭素化(ZEH-M)促進事業
基本的に、国が推進する事業であるZEH絡みの事業とは併用できない、と覚えておくとよいでしょう。
助成金交付の申請の受付は、令和3年度までに随時決まり次第更新されていきます。
次回の受付は、令和2年2月17日から2月21日までが予定されています。
その後のスケジュールについては都の発表を待ちましょう。
申請に必要な書類は、東京都の環境公社ホームページからダウンロードが必要となります。
必要事項を記入し、郵送での申請となります(持ち込みは不可)。
なお、申請した書類に書き損じなどの不備があった場合には、申請者あるいは代行者(施工業者など)は、修正を求められた日の翌日から起算して20日以内に修正が必要となります。
対応できない場合には、申請自体が撤回されてしまう可能性がありますのでご注意ください。
書き損じ以外にも不備としてみなされる事項は下記のとおりです。
・黒あるいは青色のボールペン及び万年筆以外での記入
・鉛筆やフリクションなど消すことが可能なペンでの記入
・複数名建築主がいる場合(夫婦共同名義など)は、代表者を申請欄に記入し、もう一名は欄外に記入(記入がない場合には不備として扱われます)
・代行者が手続きする場合でも、申請書同封のはがきのあて先は申請者宛てにする(代行者宛てになっている場合、不備扱いになります)
・修正液や修正テープでの修正は不可(修正が必要な場合は、二重線で訂正し押印が必要となります)
環境に優しいだけでなく、住宅補助も受けられることでお財布にも優しい東京ゼロエミ住宅。
東京都内でこれから新築を検討されている方は、ぜひ利用してみてくださいね。